コロナ禍(COVID19)の影響下、企業の生命線である「従業員の雇用維持」を考える 研究員 福永沙央里による提言
経産省による「コロナに係る雇用維持についての要請」をうけて
一般社団法人「未来友」(東京都葛飾区、代表:荻野一美)の研究員を務める、人材系コンサルティングを行うナッツクラッカー株式会社(東京都渋谷区)の代表・福永沙央里は、昨今のコロナ禍(COVID19)の影響下において、企業の生命線である「従業員の雇用維持」について見解と展望をまとめ、クライアントおよび関係各社に展開しました。
経産省が4月13日、厚生労働大臣、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣と連名で、新型コロナウイルス感染症に係る雇用維持等に対する配慮について関係団体に要請したことを受け、その内容ついて解説・発信しています。
同時に「未来友」では、各社およびメディア等からの問い合わせ・相談に無料で対応し、シンクタンクとしての知見を開放するとともに、企業および国の経済活動を下支えしていく方針を固めました。
経産省は各事業者に対して、従業員の雇用維持に努めるよう要請した。特に急激な事業変動の影響を受けやすい有期契約労働者、パートタイム労働者及び派遣労働者、新卒の内定者などの雇用維持に関して適切な配慮を行うよう要請した。具体的な要請項目は以下。
- 従業員と新入社員の雇用維持
- 求人の積極的実施
- 内定者への入職日の配慮
- 採用活動の柔軟な対応
- 障碍者や外国人労働者も日本人同様に配慮
- パートや派遣の雇止めを控えるなど特段の配慮
- 休みやすい環境の整備やテレワークの活用
見解と提言
事業活動を縮小せざるを得ない事業者が増加しているが、従業員の雇用維持は、日本企業にとって事業活動の生命線でもある。
海外では(特に接客業や興行業において)コミッション制やチップ制を採っている企業の中で、「一度従業員を解雇しコロナ禍が収束したら再雇用する」という約束手形のようなものを出す企業も存在し始めている。
ここで、海外を参考にして日本でも・・・と考えるのは早計である。この関係性が成り立つのは、もとより「終身雇用」という概念がない場合だけと考えたほうが良い。
日本のように「終身雇用」「会社は従業員を守って然るべき」という概念が強く、企業に比して従業員の権利が強く守られている国では、いちど雇用関係を断絶された従業員が、コロナ収束後に戻ってくるとは考えにくい。
特に、もともと離職率が全業界の中でも突出しているホテル業界などでは、コロナ収束後に需要が復活した際、再び従業員を募って成功することは至難の業だろう。何より、たとえコロナが収束しても、日本全体を覆う人手不足は収束しない。
つまり、日本企業は、「現在は雇用維持が企業生命を脅かしているが、コロナ収束後は人手不足が企業生命を脅かす」というジレンマに苛まれている構図なのである。
政府が雇用調整助成金に相当力を入れているのも、このような背景があるからこそだろう。リーマンショック時の雇用調整助成金よりも、更に厚い助成率の引き上げや、人員育成にともなう助成額の加算など特例措置が拡大されているのは、当時よりも「事態収束後の人手不足に備えて雇用を維持する必要がありますよ」ということの現れではないだろうか。
他にも、テレワークを推進するIT導入補助金の拡大、非対面型サービス導入をサポートする小規模事業者持続化補助金の上限額の拡大、売上減少そのものを補填する持続化給付金(新設)、個人向け緊急小口融資(新設)など、企業の雇用維持および経済活動をサポートする施策が用意されているので、内容を確認していただきたい。
また、外国人労働者および外国人労働者を雇用する企業の支援を行う「未来友」では、この度の経産省の要請の中で、政府が、外国人労働者にも日本人同様に配慮するよう求めたことに、強く賛同の意を表する。
もとより人手不足に悩まされる日本企業を救ってくれているのは外国人労働者の方々であり、彼らをないがしろにすることは人道にもとる。さらに、コロナ対策については世界中が互いに「国としての対処の在り方」に注目している。
2021年の五輪開催国でもある日本としては、ぜひとも人道的先進国として、正しい道を歩みたいものである。
要請に関わる支援政策概要
GDPの2割にあたる事業規模108兆円の経済対策が決定している。
- 実質無理子・無担保の資金繰り支援策を民間金融機関に拡大
- 特に厳しい状況にある中小・小規模事業者等に対する給付金制度の創設
- 納税や社会保険料の支払い猶予等の措置
- 雇用調整助成金の特例措置の拡大
-
- 解雇を行わず雇用を維持する企業に対して、正規、非正規にかかわらず、中小企業は9/10、大企業でも3/4に引き上げるなど助成率の上乗せ
- 教育訓練を行った場合には雇用調整助成金の助成額が加算
- 雇用保険被保険者でない労働者も、休業の対象に追加
- 申請に関わる負担の軽減などの追加措置