一般社団法人未来友は東京都葛飾区に所在し、民間のシンクタンクとして、労働と国際関係についての情報発信、研究や政策提言を行っています。また、特に見識が厚い方々に専門研究員として業務を委託し、日常的な研究・発信と、セミナーやメディア発信・コンサルティングを行っています。

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コロナ禍(COVID19)の下、外国人技能実習の円滑な再スタートに向けた、入国後講習期間の支援の必要性について  主管研究員 永井知子の提言

一般社団法人「未来友」(東京都葛飾区、代表:荻野一美)の主幹研究員であり国際労務アドバイザーである永井知子は、昨今のコロナ禍(COVID19)の影響下において、入国後講習センターの重要性について言及し、各社に展開した。

3月下旬から世界各国で出国制限、あわせて日本でも外国人労働者の入国制限がなされている背景を受けて、今後の動向を整理した。

※「未来友」では、個人・企業およびメディアからのお問合わせ・ご相談に無料で対応し、シンクタンクとしての知見を開放するとともに、皆さまの経済活動を下支えしていく方針を固めています。詳しい情報分析やご相談については、お気軽にお問合せください。

 

  • 外国人技能実習生への影響

厚生労働省が発表した2019年10月末時点での日本での外国人労働者数はおよそ166万人、そのうち外国人技能実習生は約23%にあたる38万4千人を占めている。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_09109.html

2019年6月の政府統計によると、技能実習生1号(1年目)はおよそ17万人となっており、一カ月14,000人の実習生が毎月入国していることになる。(春の時期は新規受入れが比較的多くなるので、それ以上の数と予想される)

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00250012&tstat=000001018034&cycle=1&year=20190&month=12040606&tclass1=000001060399

よって、入国制限によって技能実習生が日本に入国できないと、1カ月で14,000人、2カ月で28,000人が国外で待機していることになる。企業側もいつ技能実習生を受け入れられるのか、待ちわびている状況だ。

コロナが収まり入国制限が解除になると、これらの技能実習生を一気に受け入れないといけなくなる。それには、監理団体や企業は勿論、技能実習生の入国後講習を担当する入国後講習センターの役割は非常に重要である。

 

  • 入国制限が解除されたら

入国制限のある現状も大変だが、制限が解除されて外国人が入国できるようになれば、それはそれで大変になることが予想される。

まずは待機している技能実習生が一気に日本に入国するため、おそらく格安航空券は瞬時に売り切れることだろう。技能実習生が入国後に必ず受講が必要な、入国後講習センターも満席になるだろう。入国後講習センターで技能実習生に日本語を教える、日本語教師も不足するだろう。そして、入国後講習中に技能実習生が滞在する宿泊施設も満杯になるだろう。

技能実習生だけではなく、特定技能の在留資格での就労を希望している外国人、日本での留学を希望している外国人も大勢いるだろう。これらの外国人が一気に日本に入国することが予想されるから、しっかりとした受け皿を用意しなければならない。しかしその時に、日本にそこまでの体力があるだろうか。企業は勿論、正常に稼働できる入国後講習センターはどのくらい存続できているだろうか。日本語教師等、入国後講習に必須なスタッフが確保できているだろうか。

  • 日本国内の状況

ご承知のように日本国内でもコロナは多大な影響を及ぼしており、受注の減少により経営が厳しい企業も増加している。政府の方では、労働者を守るため、企業を存続させるための補助金や助成金の拡充など様々な対策を検討しているが、それでも追い付いていない状態だ。

経営が苦しいのは、入国後センターや日本語学校も同様だ。いや、外国人が対象の組織ほど、コロナのダメージが大きい。特に技能実習生の受入れを専門としてきた機関では、実習生の受入れがなくなったため、4月以降の運営が完全に止まっているところも多い。倒産した日本語学校も出始めている。まだ倒産はしていなくても、運営ができないため完全休業となり、収入が0となっている機関も多い。従業員は、休業扱いだ。雇用調整助成金により従業員の休業手当分の補充はできるにしても、組織の運営費用を加味すると莫大な赤字になりとても存続は難しいというところが多いだろう。この夏までに営業が再開できいないと倒産する入国後講習センターは増えるだろう。

技能実習制度を支える大切な機関である入国後講習センターが経営の危機にさらされているのだ。

  • 円滑な再スタートのために

技能実習制度を成り立たせるためには、入国後教育センターも重要である。それぞれの役割がきちんと機能して、充実した技能実習ができるし、実習生の快適な生活が確保される。それにより企業も安定した受け入れができる。技能実習制度の円滑な再スタートのためには、実習生の保護、受入れ企業の支援は必須だが、入国後講習センターや日本語教師などのサポートも大切である。