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「外国人を雇うのではなく一緒に働くということ」 ~インドネシア人専門の人材紹介会社からのヒアリング結果の報告~

「外国人を雇うのではなく一緒に働くということ」 ~インドネシア人専門の人材紹介会社からのヒアリング結果の報告~

主管研究員 永井知子

2020年1月末に公表された外国人雇用状況報告では、インドネシアの外国人材の受入れは、前年比23.4%の伸び率となっています。今回はインドネシアの人材紹介を専門としているセティア マネジメント株式会社 https://setia-mgmt.co.jp/ 代表取締役の矢部 将勝様に、インドネシア人材を理解するために企業が知っておくべき点についてヒアリングした内容を報告致します。

外国人視点での考察の重要性

日本人従業員と接する際に当たり前にしていたことが、外国人にとっては理解しにくかったり、違和感を感じることがあります。そういう視点をとらえ、外国人が働きやすくするための留意点を押さえることが第一歩として大切です。

【給与額等の労働条件の説明】

インドネシア人は給与を手取りで考えるため、求人情報や採用面接等で「給与〇円」という説明をすると、手取り額のことと解釈されることがあります。誤解が生じてトラブルに発展することのないように、報酬額については、基本給や手当の額だけではなく、社会保険料や所得税などの控除項目とその概算も説明し、手取りでおよそいくらになるか伝えることは必須であると考えられます。

【注意や指導をする際の留意点】

インドネシア人に対して業務上等で何か注意をするときに他の人の前で伝えてしまうと、ショックを受けて信頼関係が壊れてしまうことがあります。必ず他の人がいないところで個別に、かつ何がいけなかったのかの行動について明確に説明することが極めて重要です。また、感情的に叱ったり、相手の人格を否定する様な言い方も禁物です。

 

上記は留意点の一部です。日本企業で日本人と働く上では、こういう配慮が必要なことが意外に感じる部分があるかもしれないですが、インドネシア人にとっては当たり前のことです。インドネシア人に限らず、外国人労働者と信頼関係を築いていくには、まず相手の目線で考え、日本の制度を理解して頂くための工夫をしたり、相手を気持ちを尊重することなどの配慮が求められます。

 

文化的背景の理解の重要性

外国人と一緒に働くには、業務上の注意点だけではなく、その国の宗教や文化的背景についての理解が重要です。例えば、インドネシアではイスラム教の信者が多いため、イスラム教の習慣についても深いところまで理解が必要になります。

イスラム教では1日5回お祈りをすることがよく知られています。業務時間中にお祈りで職場を抜けることもあるため、これがネックとなりイスラム教徒の外国人の雇用を敬遠する企業もあります。ただし、実際に業務時間にかかるのは、5回のうち1~2回です。お昼休み等の休憩を活用して、業務時間中に1回のお祈りで済んでいるケースもありますし、企業側の理解により問題なく働けているケースが多いため、必要以上に心配することはないとも考えられます。

なお、イスラム教では、約1か月間、日中に断食をするラマダンという習慣があります。このラマダンは夏の時期に行われることが多いため、体調不良を起こしやすくなりますし、脱水症状を起こしやすくもなるため、企業側でも従業員の体調管理に配慮する必要があるでしょう。

こういった文化的背景についても日本企業側が積極的に理解し、外国人労働者が働きやすいような環境づくりが必要です。相手を尊重し理解する態度で接することは、確かな信頼関係を築くことにつながると言えるのではないでしょうか。

 

インドネシア人材への展望

外国人労働者は仕事をすぐ辞める、という先入観を持っている人も多いです。しかしながらインドネシア人は、個人差はありますが、我慢強く忠誠心が高い人が多いため、日本人よりも定着率が高いという意見もよく聞かれます。また一生懸命働くため業務上の評価も高く、企業にとって貴重な戦力となっていることも多いのです。

さらに、目上の人を敬う文化もあるため職場の上下関係への理解もありますし、フレンドリーな面も持ち合わせているので職場が明るくなったとの声もよく聞かれます。

勿論、カルチャーギャップはお互いにあるでしょうが、共通点もありますし、日本の職習慣になじんでもらえる要素もあります。このような話を聞くと、インドネシア人と日本企業は相性が良いと思える部分も多いのではないでしょうか。このような素晴らしい人材とより良い関係を築くために、日本のことも理解して頂くよう積極的にコミュニケーションを取り、相手を尊重し理解する態度で接することで、心強い仲間となりうることが期待できます。

外国人材受入れへの提言

人手不足のため外国人の受入れを検討する企業は多いですが、外国人に対して、「雇ってあげている」意識を持っている企業はまだあるようです。しかし諸外国から見て、日本は働きやすい国として選ばれているわけでは決してありません。優秀な外国人材は、日本ではなく他の国を就労先として選ぶ傾向があることはよく知られた話です。

外国人労働者に進んで日本で働きたいと思って頂くためには、日本企業側が、外国人労働者を同じ仲間として「一緒に働く」「働いていただく」と考え、相手を尊重することが大切と考えられます。

そのためには、日本で働くのだから相手が日本について勉強すべきだというような上から目線的な考え方で外国人に接するのではなく、日本の制度や習慣の長所を理解して頂くために、日本人の方から積極的にコミュニケーションを取り、外国人の考え方や文化を尊重し、柔軟に受け入れる態度で接することが大切です。こういった姿勢はインドネシアの人材に限らず、他の国からの外国人材を受け入れる際にも重要なことです。このことがわかっている企業は、外国人材と強い信頼関係を長く続けられると言えるのではないでしょうか。